昨年度に引き続き、県教連委員長を拝命いたしました金子 孝司です。

令和5年度に県教委より出された緊急措置「中学校2、3年生における38人学級」は解消されたものの、「加配の一部凍結」については、令和6年度の加配数も令和5年度並み(令和4年度比252名減 ※児童生徒数による自然減を含む)で解消されず、人員不足は続いている状態です。

「人員不足により現場は逼迫している」「限界である」といった会員の声が事務局にも多く寄せられ、教職員のボランティア精神に頼った学校運営は限界を迎えてきていることを肌で感じています。「令和5年度、少ない人員でなんとかなったから、令和6年度もなんとかなるのではないか」といった安易な考えを県教委がもし持っていたとすれば、山口県教育が本当に崩壊しかねないという強い危機感を持っています。

「働き方改革を推進していく上で学校現場に欠かすことのできない存在である」として、令和6年度文科省予算には「教員業務支援員全公立小中学校配置」が盛り込まれました。しかし、県教委の令和6年度予算では、公立小中学校配置の教員業務支援員は、令和5年度同様110人。これでは4校に1人程度しか配置されません。他県では、すでに独自の予算で全公立小中学校に配置しているところもあれば、令和6年度から配置したところもあります。また、全公立小中学校配置でないとしてもほとんどの都道府県が令和6年度増員している中、山口県のこの状況は看過できません。働き方改革の推進のために、教員業務支援員の全公立小中学校配置を県教委に対し強く求めていきます。

仮に教員業務支援員が配置されたといっても教員不足が解消されるわけではありません。教員業務支援員はあくまで学校の業務をサポートする人材であるため、教員不足解消のためには人材発掘は不可欠です。県教委は「県外の採用試験の受験会場追加」「教員の魅力を発信する動画作成」といった新たな取組を始めとして様々な手立てを講じて、若手の人材発掘には力を注いでいます。将来の山口県教育を担う若手の人材発掘はもちろん必要ですが、それだけではすぐに教員不足を解消することはできません。県教連では60歳を超えた人材の活用について昨年度より県教委に求めています。定年延長や再任用制度がスタートしていますが、昨年度県教委に確認した情報では、再任用希望者は小学校で5割強、中学校で7割強に留まっているとのことです。実際に再任用の会員からは、「給料は減るが、仕事は全く減らないためモチベーションは下がる一方である」「現場の大変な状況が続いているために体力的に厳しい」といった声が聞かれ、現場にとって即戦力である人材をみすみす逃している状況です。県教委としても「再任用の希望者を増やしていきたい」としているものの、具体的な政策は令和6年度予算の中にも見られません。県教連では、60歳を超えた教職員が引き続き意欲を持って働くことができるように、60歳を超えた教職員への手当の新設や、担任以外のポストの増設を求めていきます。

支援人材を含め人員の確保をお願いする一方で、合わせて働き方改革を推進していかなければなりません。県教委より「学校における働き方改革加速化プラン(第3期)」が発表され、その中の「教員一人当たりの1か月の平均時間外在校等時間」を見ても、令和3年度から令和4年度にかけてはわずかしか減少しておらす、働き方改革が順調に進んでいるとは言えない状況です。令和5年度も給料表、期末勤勉手当(ボーナス)の支給割合が改定され、月例給、ボーナスは増えました。しかし、ある若手の先生からは「給与が増えるのはもちろんうれしいけれど、業務が減るほうがいい」という話を聞きました。数値同様、「働き方改革が進んでいるように感じられない」というのが現場の声です。いくらプランを作成しても、実行し働き方改革につながらなければ意味がありません。県教委には、プランの確実な実行・推進を求めるとともに、率先して会議・調査等の業務の削減を求めていきます。

このように今、まさに山口県教育は危機的な状況におかれ、その状態は年々深刻化していっています。「多忙化とそれに見合わない給与を理由とする若者の教職員離れ」といった負のスパイラルから抜け出せていない現状は、子供たちにとってもマイナスでしかありません。

「子供たちが自分の夢をもって楽しく充実した学校生活を送り」

「教職員が誇りをもって生き生きと教育活動を行う」

ことができるよう、なんとしても現在の負のスパイラルから抜け出し、山口県教育を正常なものに戻していく必要があり、それを行っていくのは県教連の役目であると私は信じています。

一方で県教連も過渡期を迎えています。新型コロナウイルス感染症の蔓延により社会の様子は大きく変わりました。県教連においても新型コロナウイルスの影響を受け、様々な会議、研修会、行事の中止を余儀なくされました。令和5年度新型コロナウイルスは5類に移行したものの、県教連の活動もコロナ前の状況には戻ったとは言えません。もうコロナ前の状態に戻すことは不可能であるとさえ感じています。そのため、県教連も時代や社会の変化に合わせて持続可能な形に生まれ変わっていかなければなりません。それは各単組でも同じではないでしょうか。一部の会議(報告が中心の会議)をリモートで行う等の変革は行ってきましたが、それでは不十分です。県教連としても穂の等に必要なものにしっかり力を注いでいくことができるような形に変革していきます。

 

そのため、今年度の県教連のスローガンは、

         山口県教育、山口県教連の再生

とさせていただきました。山口県教育の危機的な状況を改善して正常な状態に戻し、県教連が生まれ変わっていくために、会員皆様のお力を貸していただければと思います。

 

令和6年4月

山口県教職員団体連合会(県教連)

委員長 金子 孝司